ロスゼロブログ

カテゴリ一覧

摘果りんごとは?知られざる栽培方法と隠れ食品ロス

公開日: 更新日:2023.12.22
摘果りんごとは?知られざる栽培方法と隠れ食品ロス

 

先日ロスゼロの営業担当が、展示会で信州のりんご農家さんのサポートや製造・卸売をされているりんごメーカーさんにお会いし、「摘果りんご」のロスの現状を聞いたそうです。

りんごの栽培には、実の大きさと味を調整するために、真ん中の「中心果」を残し、周りの果実を摘み取る「摘果作業」が必須となります。

しかし、農家さんでは高齢化により摘果されたりんごを拾う人がおらず、落ちたりんごによってケガをするケースが後がたたないのだとか。

また、3~7個のりんごの実のグループから、大きな1個を選び、他の果実を切り落とすので、約7~8割のりんごがロスになってしまうそうです。

今回はりんご栽培に欠かせない「摘果りんご」と食品ロス対策について考えていきます。

摘果りんごの基本知識:なぜ摘果が必要なの?

未熟な摘果りんご

栽培における効果

摘果はりんご栽培において重要な技術であり、適切な摘果作業によって、りんごの質や収穫量が向上します。過剰な果実を取り除くことで、残った果実に栄養が集中し、より大きくて美味しい果実が育つ効果があります。

また、摘果によって適切な果実の間隔が保たれ、病気や害虫の発生リスクが減少することが知られています。実際に、摘果を行ったりんごの収穫量は、行わない場合と比較して約20%向上すると言われています。

農家は、品種や栽培環境に合わせた摘果の方法やタイミングを熟知していることが、良質なりんごを生産するための鍵となります。

 

収穫時期と摘果

りんごの収穫時期は品種や栽培地域によって異なり、それに合わせた摘果のタイミングが重要です。一般的に、早生種のりんごは摘果を早めに行い、遅生種のりんごは摘果を遅らせることで、果実の成熟度が均一になります。

例えば、ふじりんごは遅生種であり、収穫時期が10月下旬から11月にかけてとなるため、摘果は7月から8月にかけて行うことが一般的です

。適切な摘果のタイミングを把握することで、りんごの品質や収穫量が向上し、消費者にも満足度の高い果実を提供することが可能となります。

 

摘果りんごと通常りんごの栄養比較

未熟な状態で収穫される摘果りんごと通常のリンゴを栄養面で比較すると、いくつかの違いが見られます。摘果りんごは、糖度がやや低めで酸味が強いため、カロリーが若干少なく、ビタミンCやクエン酸が多く含まれています。

また、抗酸化作用が強いポリフェノールも通常のりんごより多く含まれていることがあります。

 

知らなかった!?りんごの栽培方法

りんごの摘果作業

りんごの摘果のやり方

摘果は、花が咲いた後から収穫直前までに何度か行われますが、一般的には以下のような手順でおこないます。

花摘み

花が咲いた後、一つの枝についている花のうち、中央にある一番大きな花(王花)以外を摘み取ります。王花は最も早く開花し、受粉率が高く、実が大きくなりやすいからです。

仮摘果

王花から実ができた後、一つの枝についている実のうち、王果以外を摘み取ります。王果は王花からできた実で、最も大きく成長する可能性が高いからです。

本摘果

王果が直径2~3cmになった頃、一つの枝についている王果のうち、一番大きくて形の良いもの1~2個だけを残して他は摘み取ります。これにより、残った王果に栄養が集中し、さらに大きく美味しくなります。

 

りんごの木の剪定

剪定とは、りんごの木に生えている枝を切り落としたり切り戻したりして、樹形や枝ぶりを整えることです。

剪定は、木の生長や開花・結実に影響する重要な作業で、以下のような時期に行われます。

冬剪定

冬季(12月~2月)に行われる剪定で、主に樹形作りや枝ぶり整理を目的とします。枝が葉で隠れていないため、剪定しやすくなっています。冬剪定では、不要な枝や病気・虫食い・傷ついた枝を切り落としたり、主枝や副主枝から伸びる枝を適度に切り戻したりします。

夏剪定

夏季(7月~8月)に行われる剪定で、主に日当たりや風通しを良くすることを目的とします。夏剪定では、生長が旺盛な枝や他の枝と交差している枝を切り落としたり、新しく伸びた枝を短く切り戻したりします。また、枝をひねって下向きに成長させる「捻枝」という技法も用います。

 

りんごの葉摘み

 葉摘みとは、収穫前に行われる作業で、実を覆っている葉を摘み取って日光を当てることで着色を促進することです。葉摘みは以下のような手順でおこないます。

葉摘み時期

葉摘みは品種や地域によって異なりますが、一般的には9月~10月頃に行われます。この時期は実が大きくなり、色づきが始まる頃です。葉摘みを早く行うと、実が日焼けしたり、糖度が下がったりするおそれがあります。

葉摘み方法

葉摘みは、実の周りの葉を中心に行います。実に直接触れている葉や、実の上下左右にある葉を摘み取ります。ただし、葉を摘みすぎると光合成ができなくなるため、実の根元にある葉や枝先にある葉は残しておきます。また、実の反対側にある葉は反射シートを使って日光を当てることもできます。

 

摘果りんごの食品ロス問題

モノクロの中に一つ赤いりんご

摘果りんごは、通常のりんごと比べて未熟で形や大きさが不揃いであるため、販売されないことが多いです。しかし、摘果りんごは味や栄養価に問題がないことが多く、食品ロスの原因となっています。

実際に、3~7個のりんごの実の房から、形がきれいな1個を選び、他の果実を切り落とすので、約7~8割のりんごがロスになってしまうそうです。(りんごメーカー談)

摘果りんごを有効活用することで、食品ロスの削減に大きく貢献できることから、消費者や農家が一緒になって取り組むことが求められています。

 

摘果りんごの活用事例

摘果りんごのシードル

シードル作り:摘果りんごで楽しむ新たな味わい

摘果りんごは、そのままでは市場に出回りにくいものの、シードル作りには適しています。シードルはリンゴを発酵させたアルコール飲料で、摘果りんごの酸味や独特の風味が、独特の味わいを生み出します。

また、摘果りんごを使用することで、リンゴの多様性を活かした地域独自のシードルが誕生することがあります。これにより、地元の特産品として消費者に喜ばれるだけでなく、食品ロスの削減にも貢献できます。

 

摘果りんごを堆肥に活用

摘果りんごは持続可能な農業にも貢献できます。例えば、摘果りんごを堆肥にすることで、土壌の肥沃性を向上させ、化学肥料の使用量を減らすことができます。いくつかの農家では、摘果りんごを堆肥にしてサステナブルな栽培を実現しています。

 

家庭で作れる!摘果りんご活用レシピ

摘果りんごは、家庭で手軽に楽しむことができる食材です。例えば、りんごのコンポートやサラダ、煮物など、日常の食卓に取り入れやすいメニューに活用することができます。

また、りんごを乾燥させたチップスや、摘果りんごを使ったスムージーなど、手軽でヘルシーなレシピも人気です。こうした家庭での活用を通じて、摘果りんごの魅力を広めることができ、食品ロスの削減につながります

 

摘果りんごを使った創作メニュー

例えば、りんごのタルトやケーキ、ジャムなどのスイーツに摘果りんごを使うことで、独特の風味を楽しむことができます。

未熟で酸味の強い摘果りんごも、シェフの手によって、食品ロス削減と味の楽しさを両立できる逸品に変身します。

 

長野県産の摘果りんごがフレンチ料理に生まれ変わる? ロスゼロレストラン

ロスゼロレストラン

 

先日、3年ぶりに開催された「ロスゼロレストラン」。

規格外の食材がフレンチ料理に生まれ変わる、「ロスが減る、笑顔が増える」をコンセプトにしたレストランです。

 

当日集まった食材リストの中で、長野県産の「間引かれた摘果りんご」が入っていました。

 

間引かれた未熟なりんご

 

さて、今回のロスゼロレストランでは、規格外だった「摘果りんご」がどのように生まれ変わったのでしょうか?

 

「摘果りんご」の他にも、規格外の野菜やお肉など、こんなに美味しいものがロスに?ってなってしまうような食材が、豪華なフレンチ料理に生まれ変わりました!

 

ロスゼロレストランのレポート、今集まっている食材の詳細については、こちらのブログもご参考ください。

規格外食材がフレンチ料理に!ロスゼロレストラン開催レポート

6/3(土)開催決定!ロスゼロレストラン@レ・フレール

 

ロスゼロブログ一覧へ

この記事を書いた人

中角

関西学院大学総合政策学部卒業。
カンボジアの現地企業にて、ゼロウェイスト関連の仕事に従事したのち、ロスゼロの広報担当として社内のことやSDGsについて発信しています。
趣味は犬と戯れること。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。