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スマート農業のメリットとデメリット

公開日: 更新日:2023.07.25
スマート農業のメリットとデメリット

 

 日本の農業は今、高齢化や担い手の不足といった課題を抱えています。

 こうした課題を解決するのに役立つと考えられているのがスマート農業およびアグリテックです。

 

今回は、スマート農業とはいったいどういうものなのか、スマート農業のメリットやデメリット、実際に取り組む企業の事例などを紹介していきます。

 

スマート農業とは

スマート農業

スマート農業(アグリテック)とは、ロボットやAI、IoTといった先端技術を使った農業のことです。

新しいテクノロジーを使うことによって、農業が抱えるさまざまな課題を解決できると期待されています。

 

例えば、ロボットトラクタや、スマートフォンで操作できるシステムなどを使えば、少ない人数で農作業ができるようになるでしょう。

そうすれば、農業の人手不足という課題を解決できます。

 

また、ドローンや衛星などで田畑の情報を集め、AIで解析することなどによって農作物の生育状況を確認したり、病害虫による被害がないかどうかをチェックしたりすることもできます。

こうした技術は、少ない人数で農作業の品質を向上させるのに役立つと考えられます。

 

このように、新たな技術をうまく使って課題の解決を目指す農業のことをスマート農業と呼びます。

 

スマート農業が必要とされる背景

農業従事者

 

スマート農業が必要とされる背景には、農業が抱えるさまざまな課題があります。

その中から「労働力不足」と「負担の軽減」という2つの大きな課題を解説します。

 

農業の課題①:労働力不足

国内の農業分野に携わる人数は、この60年あまりで大幅に減っています

1960年ごろには約1,175万人だった農業従事者は、

2020年には約136万人になっています。

 

農業従事者の平均年齢も、2020年現在67.8歳と高いのが現状です。

この状況が続けば、国内の農業はさらに深刻な状態になってしまうでしょう。

 

農業の課題②:負担の軽減

農業の現場には、経験が豊富でなければできないような高度な作業が多くあります

 

例えば、トラクターの操作には熟練の技術が求められ、新規参入が難しいのだそうです。

また、機械では行えないような複雑な農作業もあります。

その一方で、農作物を出荷するための選別作業などには多くの人手が必要です。

こうした農作業の特性から、人手の確保、作業の効率化、負担の軽減などが課題となっています。

 

労働力不足が問題視される中、こうした負担を減らさなければ、農業の生産性をアップすることは難しいでしょう。

このように、国内の農業はさまざまな課題に直面しています。

そのため、スマート農業などの新しい取り組みによって課題の解決が求められているのです。

 

スマート農業に取り組む企業の事例3選

ドローンでスマート農業

 

スマート農業の取り組みは、農林水産省による実証実験などを経て実用化が進められています

これまでの取り組みの中から、ヤンマー、NTTデータ、オプティムによるスマート農業の事例を3つご紹介します。

 

事例①:ヤンマーの「自動走行トラクター」

ヤンマーの自動走行トラクター

 

(出典:農林水産省『スマート農業の展開について』2023年1月)

 

農機などの大手メーカーであるヤンマーは、無人で作業する「自動走行トラクター」の開発を北海道大学などと共同で行っています

人による作業と「自動走行トラクター」による作業を組み合わせることで、一人あたりの作業面積が拡大し、農業の大規模化が可能になるというメリットがあります。

この「自動走行トラクター」は2018年から市販され、実用化されています。

  

事例②:NTTデータ「病害虫診断アプリ」

NTTデータの病害虫診断アプリ

(出典:農林水産省『スマート農業の展開について』2023年1月)

 

NTTデータは、農研機構などと共同で「病害虫診断アプリ」の研究開発に取り組んでいます

これは、スマートフォンなどにインストールしたアプリを通じて農作物の写真をとり、その写真をAIが分析して病害虫などによる被害を診断するというものです。

病害虫を早期に発見することで、農作物への被害を抑えることができます

 

事例③:オプティム「ドローンによるピンポイント農薬散布」

オプティムのドローンによるピンポイント農薬散布

(出典:農林水産省『スマート農業の展開について』2023年1月)

 

AI・IoT・ビッグデータなどのプラットフォームを展開するオプティムは、ドローンを使って必要な場所だけに農薬を散布する技術を開発しています。

この技術によって、農作物の生育の状況や病害虫の発生状況に応じてピンポイントで農薬を散布することができるようになります。

農作物がムラなく生育することに加え、農薬の使用量を大幅に減らすことができ、環境にもメリットがあると考えられています。

 

(参考:農林水産省『スマート農業の展開について』2023年1月)

 

スマート農業のメリットとデメリット

トラクターで農薬をまく

 こうした取り組みからわかる通り、スマート農業には農作業の効率化や生産性の向上、環境への負荷を減らすなどのメリットがあります。

 

その一方で、スマート農業そのものに課題があることも事実です。

例えば、最先端のトラクターなどはまだ高額であり、導入するには初期コストが高いといった課題があります。

また、自動運転といっても、すべての農地に適しているわけではなく、複雑な形の田畑や狭い場所では使えないなどの課題もあります。

 

ほかにも、機器やアプリの操作方法に詳しい人がいない、操作方法がわからずデータの活用ができていないなど、ソフト面における課題も残されています。

GPSが搭載されたアプリなどを使う際には、通信環境の整備も課題でしょう。

 

農林水産省はこれまで、全国205の地域でスマート農業の実証事業を行ってきました。

その結果、スマート農業にはメリットがある一方で、課題もあることがわかったのです。

 

現在、スマート農業の機器を導入する初期費用が高いといった課題には、定額で利用できるサブスクリプションサービスなどが提案されています。

今後、スマート農業の実用化に向けて、こうした課題を一つずつクリアしていくことが求められます。

 

スマート農業の実用化に向けて

新芽とAI

スマート農業が普及するには、まだいろいろな課題を乗り越える必要があるでしょう。

 しかし、国内の農業が直面する課題は深刻な状況で、一刻も早い課題の解決が望まれます

 

農業は、私たちの食を支える大切な産業です。

新しいテクノロジーやアイディアによって、日本の農業が抱える課題が解決し、農業そのものが活性化するように応援していきたいですね。

 

スマート農業に取り組む企業としてご紹介したオプティムでは、AIやドローンを使って農薬の使用量を抑えたお米「スマート米2023」を販売しています。

私たち消費者ができることは、こうした商品を購入して応援することではないでしょうか。

 

これからも、スマート農業に関する取り組みにアンテナを張り、アクションを起こす、アクティブな消費者であるよう心がけましょう。

 

(参考:株式会社オプティム『AIやドローンを使い、農薬使用量を抑えたあんしん・安全なお米「スマート米2023」、2022年度産新米の販売を開始』2022年11月17日) 

 

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この記事を書いた人

サステナブルライター 山下

電力会社やベンチャー企業でエネルギー関連のビジネスに従事したのち、2019年にサステナブルライターとして独立しました。「家庭の省エネエキスパート」資格を持ち、自治体において気候変動や地球温暖化に関するセミナーを実施した経験もあります。環境問題をもっともっと身近に感じてもらえるよう、わかりやすい記事を心がけています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。