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将来コーヒーが飲めなくなる? 「コーヒーの2050年問題」とは

公開日: 更新日:2023.06.28
将来コーヒーが飲めなくなる? 「コーヒーの2050年問題」とは

 

みなさん、コーヒーはお好きですか?

筆者は大好きで、必ずといっていいほど1日1杯はコーヒーを淹れて楽しんでいます。

そのコーヒーが、30年後には飲めなくなってしまうという噂を耳にしました。

 

果たして、これは本当なのでしょうか?

確かめたくなって調べてみました。

ぜひ最後までお付き合いください。

 

コーヒーって世界でどれくらい飲まれているの?

珈琲のカップにミルクを注いでいる

 

そもそも、コーヒーは世界でどれくらい飲まれているのでしょうか?

コーヒーの生産量や消費量について、国際コーヒー機関

(ICO、インターナショナル・コーヒー・オーガニゼーション)の

レポートをみてみました。

 

国際コーヒー機関とは、世界中のコーヒー豆の取引量の統計をとっている機関です。

1963年からさまざまなデータをとりまとめています。

 

レポートによると、2019年度の1年間に世界中で消費されたコーヒー豆の量は、16,450万袋だったとのことです。

単位が「袋」なのでわかりにくいですね。

 

麻袋1つあたり約60kgのコーヒー豆が詰められるそうなので、計算すると、987万トンになります。

想像できないくらいの量ですが、新型コロナの影響で前年度より2.4%少ないのだそうです。

 

消費の多い地域から順に、ヨーロッパと北米に続いて、日本を含むアジア・オセアニア地域、アフリカ、中南米の順となっています。

 

ちなみに、新型コロナの影響があったにもかかわらず、アフリカだけは消費の落ち込みがなかったようです。

 

(参考:国際コーヒー機関『Annual Review Coffee Year 2019/2020』)

 

 

赤道近くの「コーヒーベルト」が生産地

木についた実

 

コーヒー豆の生産地といえば、どの国が思い浮かびますか?

おそらくブラジルやコロンビア、コスタリカといった中南米や、ケニアやエチオピアなどアフリカの国々の名前が挙がるかもしれませんね。

 

みなさんがイメージするとおり、コーヒー豆は赤道近くの国で栽培されています

このようにコーヒーの栽培に適した地帯を「コーヒーベルト」と呼びます

 

コーヒーベルトは、赤道を挟んで北緯25度から南緯25度までのエリアです。

このエリアに位置する中南米やアフリカ、東南アジアの国々が主要なコーヒー豆の生産国となっています。

 

コーヒー豆は、ずいぶん遠い道のりを旅して、日本の私たちのもとに届けられているのですね。

 

(参考:コーヒータウン『コーヒーベルトはどこ?日本でのコーヒーの栽培の歴史や条件も紹介』)

 

コーヒーの生産国ランキング、第1位は?

では、コーヒーベルトのうち、コーヒー豆の生産量が世界一の国はどこでしょう。

 

国際コーヒー機関によると、2019年度の第1位はブラジル、2位ベトナム、3位コロンビア、4位エチオピア、5位インドネシアでした。

2019年度のコーヒー豆の生産量は、これらの上位5ヶ国だけで7割以上を占めています

 

これらの5ヶ国を含む世界55の国でコーヒー豆が生産されており、生産国のほとんどがコーヒーベルトに位置しています。

 

日本は、このうち47の国からコーヒー豆を輸入しており、もっとも多くを輸入しているのはやはりブラジルとなっています。

 

(参考:国際コーヒー機関

 

 

2050年にはコーヒーが飲めなくなる?

コーヒー豆とコーヒー

 

ブラジルをはじめとするコーヒー豆の生産国で、今心配されているのが「コーヒーの2050年問題」です。

 

「コーヒーの2050年問題」とは、地球温暖化の影響によってコーヒー栽培に適した地域が減り、コーヒー豆の生産が難しくなってしまうことです。

 

中南米やカリブ海近郊の多国間金融機関である米州開発銀行(IDB)は、

このまま地球の気温が上がり続けると、2050年にはコーヒー豆の生産地域が50%に減ってしまうと警鐘を鳴らしています。

 

コーヒー豆生産国の金融機関が発表しているため、どれだけ深刻な問題であるかが推察されますね。

 

また、コーヒーの生産に適した標高は、現在1,200メートルとされていますが、気温が上昇すると1,600メートル付近になると予想されています。

標高が400メートル高くなることで、栽培に適した土地が減ってしまうと懸念されているのです。

 

さらに、気温が上がると「さび病」というコーヒーの木の病気が広がる可能性が高まるとも予想されています。

 

実際、2012~2013年ごろに「さび病」がホンジュラスやコスタリカ、グアテマラで大流行したことがあります。

このとき、各国は非常事態宣言を発出して対処しましたが、コーヒー産業に従事していた約35万人もの人々が職を失ってしまったとのことです。

 

気温が上がっていくと、「さび病」の大流行が再び起こらないとは言い切れません

 

増え続ける世界のコーヒーの需要

一方で、コーヒーを飲む人々はどんどん増えています。

 

アジアを中心にコーヒー人気は拡大しており、世界のコーヒー需要は増加傾向にあります

 

日本ではコーヒーはとても身近な存在ですが、今後は、中国やインドなどでもコーヒーの需要が増えるといわれています。

 

約14億人の人口を抱える両国がコーヒーをより多く消費するようになると、ますます多くのコーヒー豆が必要になることは容易に想像ができます。

 

しかし、コーヒー豆が減産してしまうと、需要と供給のミスマッチにより価格が上昇すると考えられます。

また、同じ理由からコーヒー豆の質の低下も心配されています

 

もし近い将来、おいしいコーヒーがなかなか手に入らない状況になってしまったらと思うと、とても悲しいですよね。

 

(参考:米州開発銀行(IDB)、コーヒータウン『【2050年問題】美味しいコーヒーが飲めなくなる?未来のために今の私達にできること』)

 

 

これからもずっとコーヒーを飲めるように

お店でコーヒーを入れているところ

 

世界中の人々が、これからもコーヒーを楽しめるように、コーヒーの国際的な研究機関であるワールド・コーヒー・リサーチ(WCRではさまざまな研究が行われています

 

例えば、気温が上がってもコーヒー豆がちゃんと育つような品種改良や、主要なコーヒー豆生産国を対象に、新しい品種の実地試験などに取り組んでいます

 

WCRには、世界中のコーヒー産業から支援や寄付が集まっており、2020年は23ヶ国、217の企業や個人からのサポートが集まりました。

 

その中には、みなさんもご存知のスターバックスやダンキンドーナツ、日本のキーコーヒーも含まれています。

 

(参考:WCR『2020 Annual Report Ensuring the future of coffee』)

 

私たち個人ができること

ずっとコーヒーを楽しめるように、私たち個人にもできるアクションがあります。

例えば、自然環境に配慮してつくられたことを示す認証マーク付きのコーヒーを選ぶことです。

 

持続可能な方法でつくられたコーヒーを選ぶことで、土壌などの環境を再生できる可能性が高まります。

 

地道な方法ですが、私たち消費者のちょっとした心掛けだけでできるアクションでもあります。

 

例えば、渡り鳥などの生き物の生態系に配慮してつくられたバードフレンドリーコーヒー

有機栽培でつくられたコーヒーをプレミアム価格で買い取ることで得た収益を生態系の保護に活用しています。

 

ほかにもフェアトレード認証」は、適正な価格で買い取るだけでなく、どこで生産され、誰が輸送したかといったトレーサビリティを明確にできる点でも持続可能性に貢献すると考えられます。

 

筆者は最近「バードフレンドリーコーヒー」を飲んでいますが、こうした認証付きのコーヒーの種類がもっと増えたらいいなと思います。

 

これからは、コーヒーのフレーバーや価格だけでなく、こうした認証マークもチェックして選ぶようにしてみると、新たなコーヒーの世界が広がるかもしれません。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

(参考:バードフレンドリー®コーヒー公式サイトフェアトレード・ジャパン公式サイト

 

 

 

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この記事を書いた人

サステナブルライター 山下

電力会社やベンチャー企業でエネルギー関連のビジネスに従事したのち、2019年にサステナブルライターとして独立しました。「家庭の省エネエキスパート」資格を持ち、自治体において気候変動や地球温暖化に関するセミナーを実施した経験もあります。環境問題をもっともっと身近に感じてもらえるよう、わかりやすい記事を心がけています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。