「食料自給率」と「エネルギー自給率」の計算式と現状


食料自給率


(Photo by Takafumi Yamashita on Unsplash

 

こんにちは、サステナブルライターの山下です。

 

みなさんは「食料自給率」と聞いて、どのようなイメージをもちますか?

日本の食料自給率は低いと聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、食料自給率には大きく分けて2つの基準があります

今日は、知っているようで知らない「食料自給率」について、詳しく解説します。

 

「食料自給率」とは?

広大な畑

(Photo by Glenn Carstens-Peters on Unsplash

 

みなさんは「食料自給率」という言葉を聞いたことがありますか?

「食料自給率」とは、日本の国内で消費された食料のうち、国産品の割合のことです

 

食料自給率は、食料の安全保障の観点からとても重要な指標です。

たとえば、食料の輸入元である外国で何らかのトラブルが起こり、

万が一供給が途絶えてしまったとしたらどうでしょうか?

 

国内の食品の製造や供給に大きな問題が起こり、

最悪の場合には食料が足りないという事態になりかねません。

 

そのため、食料自給率を高めることはリスク管理の点から重要なことです。

こういった考え方は「食料の安全保障」と呼ばれています。

 

「カロリーベース」と「生産額ベース」の2つの指標

 

現在、日本の食料自給率は

「カロリーベース」と「生産額ベース」

という2つのものさしで算出されています。

 

「カロリーベース」とは、その名の通り、

国民ひとりあたりの1日の摂取カロリーのうち、国産品が占める割合を計算したものです。

 

2019年度のカロリーベース食料自給率は、38%

計算式は以下のとおりです。

(1人1日あたり国産供給カロリー:918kcal)÷(1人1日あたり供給カロリー:2,426kcal)=38%

 

「生産額ベース」とは、

国民に供給される食料の生産額に対する国内生産の割合を示しています。

 

同じく2019年度の生産額ベース食料自給率は66%で、計算式は以下のとおり。

(食料の国内生産額:10.3兆円)÷(食料の国内消費仕向額:15.8兆円)=66%

 

 

「生産額ベース」の考え方が主流

 

日本では「カロリーベース」と「生産額ベース」のダブルスタンダードですが、

海外では「生産額ベース」の考え方が主流です。

 

「カロリーベース」の指標をつかっているのは日本だけといわれ、

専門家の間では「生産額ベース」と基準にすべきだという意見もあがっています。

 

というのも、

「カロリーベース」は食品のカロリー(熱量)を基準にするため、

品目ごとの食料自給率を正しく反映できないと考えられているためです。

 

例えば、野菜の自給率が高くてもカロリーが低いため、

自給率の向上にはあまり影響しません。

 

カロリーの高い肉製品などの自給率の方が大きく反映されてしまうのです。

実際、品目別にみてみると、

主食用のお米は100%、

野菜も約80%と高い自給率となっています。

 

食料自給率の目標値はどれくらい?

実った穂

 

食料自給率の目標値は、2030(令和12)年度までに

カロリーベースで45%、生産額ベースで75%を目指しています。

 

過去を振り返ると、50年ほど前の日本の食料自給率は今よりずっと高いものでした。

1965年の食料自給率は、

カロリーベースで73%、生産額ベースでは86%でした。

 

お米や野菜中心の食生活から、

パンなどの小麦製品、肉類や油脂類が増えたことで

食料自給率も大きく変化していきました。

 

昭和40年度以降の食料自給率グラフ

(出典:農林水産省ウェブサイト

 

海外の食料自給率は?

 

日本の食料自給率がどれくらいの水準にあるのか、

海外のデータと見比べてみましょう。

 

カナダやオーストラリアは

カロリーベース、生産額ベースともに

食料自給率が100%を超えています

 

また、アメリカやフランスもカロリーベースでは100%を上回っています

 

世界の食料自給率

(出典:農林水産省ウェブサイト

 

ここで注目したいのは、日本の生産額ベース食料自給率です。

ドイツやスイスと変わらない水準となっています。

 

「日本は食料自給率が低い」というイメージが先行しがちですが、

どういった指標で算出された数字なのか、

海外と比較してどれくらいの水準かなど、正しく知ることが大切だといえます。

 

もちろん、日本の水準は国際的にみて高いとはいえません

毎年のように異常気象が発生する昨今では、

海外からの食料供給が途絶えないとは言い切れません。

食料安全保障の観点からも、食料自給率をさらに向上させることが重要です。

 

食料自給率の問題点と食品ロス

ゴミが山積みになっている

(Photo by Jasmin Sessler on Unsplash

 

食品ロスと食料自給率との間には、どのような関係があるのでしょうか?

実は、食料自給率の算出式には、食品ロスによる食料廃棄物も含まれています。

 

カロリーベースの算出式で、

分母にあたる「1人1日あたり供給カロリー」の2,426kcalは、

食品ロスを含んだ数字です。

 

そのため食品ロスが増えれば増えるほど、食料自給率も下がってしまうのです。

 

つまり、食品ロスを減らすことは食料自給率の向上に直結します。

こうした事実を知った上で、食料自給率を上げるために私たちができることを考えてみましょう。

 

 

食料自給率を上げるには?

 

食料自給率を上げるために、消費者である私たちにできることは、まず

「地産地消」です

地元の産品を積極的に選ぶことはとてもシンプルなことですが、

大きな意味をもつ行動でもあります。

 

食料自給率の向上に貢献するだけでなく、

輸送コストの節約や地元の生産者の方々を応援することでもあるからです

 

今日からショッピングの際には産地をチェックして、

少しでも近くの産地の品物を選ぶことを習慣にしたいですね。

 

食品ロスの削減も、食料自給率の向上にとても効果的です

以前の記事でもお伝えしてきましたが、

日本の食品ロスの約半分は家庭から生まれています。

食べ残しをなくすことはもちろん、野菜や果物の皮の剥きすぎなどにも、

今一度気を付けてみましょう。

食品のシェアリングサービスなど

新しいショッピングスタイルにチャレンジしてみると、

楽しく食品ロスを減らすことができますよ。

 

知っておきたい「エネルギー自給率」

手をつないでいる人

 

食料自給率と似た言葉に「エネルギー自給率」というものがあります。

 

これは、私たちが使うエネルギーに対して、

どれくらい国産のエネルギー源が使われているかという割合を示すものです。

 

食料もエネルギーも、私たちの暮らしに欠かせない大切なものです。

この機会に、ぜひエネルギー自給率についても知識を深めておきましょう。

 

日本のエネルギー自給率は

2017年度でなんと9.6%と、国際的にみても非常に低い水準です。

 

何気なく使っている電気やガスなどのエネルギーの、

実に9割以上が海外から輸入されたものだということです。

 

これは私たちの日常生活だけでなく、

食料品の生産に使われるエネルギーでも同様です。

主要国の一次エネルギー自給率比較のグラフ

(出典:資源エネルギー庁

 

エネルギーと食料の問題は、とても密接な関係をもっています。

このテーマについては、次回の記事で詳しくお伝えしたいと思います。

 

まとめ

そばセット

(Photo by White.RainForest ∙ 易雨白林. on Unsplash

 

日本の食料自給率は、

カロリーベースで6割近く、生産額ベースで3割以上を

海外からの食品に頼っていることになります。

 

このことを知った上で、あなたが今日食べたものを思い出してみてください。

野菜やお肉、お魚などで国産の食材はどれくらいあったでしょうか?

 

食料自給率のアップも食品ロスも、

食べ物に意識を向けることからスタートします。

 

自分や大切な家族が口にするものですから、

どこでつくられ、どこから運ばれてきたのか、

改めてきちんと知ることは重要であり必要なことです

 

そして、私たち消費者の選択には大きな意味があることも認識すべきです。

 

私たちひとりひとりのチョイスは

決して小さなものではないと自覚しながら、

丁寧な暮らしを送っていきましょう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

サステナブルライター山下さん過去ブログ

 

これからもずっと魚を食べていける海に!「サステナブル・シーフード」のお話

畑で生まれる“隠れ食品ロス”とは? 私たちの知らない農業のお話

食品ロス削減のカギ「3分の1ルール」とは?生活に欠かせない流通のお話

正しく理解しよう! 「食料自給率」と「エネルギー自給率」のお話

実は食品ロスとも関係が深い「再生可能エネルギー」のお話

地域内循環で解決する「食品リサイクル」のお話

日本初のゼロ・ウェイスト宣言をしたのは徳島県の小さな町だった

アメリカの食品ロスはどうなっている?あの企業の取り組みも紹介

国連が世界初の食品ロスのレポートを発表! 明らかになった驚きの事実とは?

食品ロスはどのように処理される?家庭の食品リサイクル率は1割に満たない

12年連続!リサイクル率トップの鹿児島県大崎町の取り組み

スタートアップ企業が活躍する、世界の食品ロス対策

食品ロス量、平成30年度は過去最少!全国の削減アクション4選も紹介

長期保存に役立つ「真空スキンパック包装」とは?保存の視点で食品ロスを考えてみよう

改めて知っておきたい、地球温暖化の今 ~前編~

改めて知っておきたい、地球温暖化の今 ~後編~

IPCCとは? 最新の温暖化を伝える第6次評価報告書

2020年度の食料自給率、なんとカロリーベースで過去最低に

世界で初めて開催された「国連食料システムサミット」

人にも地球にも嬉しい食生活「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」

あの“謎肉”も大豆?! 「代替肉」とは何かを知ろう

将来コーヒーが飲めなくなる?「コーヒーの2050年問題」

土の再生をうながす「リジェネラティブ農業」とは?

リジェネラティブ農業を深掘り!日本と世界を比べてみよう

COP26の結果は? そもそもCOPとは? わかりやすく解説!

冬のおうち時間、快適さをあきらめない省エネのコツ

節分にバレンタイン、2月のイベントを食品ロスなく心から楽しむには?

コンポストはじめました! 使い方は意外に簡単

「サーキュラ―エコノミー」とは?意味や事例を分かりやすく解説

フラワーロスとは? 廃棄を防ぐ取り組みも紹介

電気代が高くなった? 高騰はいつまで続くのか、その原因は?

マイクロプラスチック問題、その原因と私たちにできる対策とは?

食品ロスがエネルギーに変わる、バイオ燃料とは?種類やメリット、課題まで

初めてのコンポスト、ベランダで挑戦しました!~完結編~

「昆虫食」が環境にやさしいって本当?虫を食すメリット・デメリットとは

飲食店での食べ残しをお持ち帰り=「mottoECO文化を根付かせよう」

太陽の熱を利用する「ソーラークッキング」とは?夏休みの自由研究にも

節電ポイントや各社の節電キャンペーンを解説!この夏を「デマンドレスポンス」で乗り切ろう

バイオ炭とは?脱炭素に役立つはたらきや活用方法をわかりやすく解説

規格外野菜とは?規格の役割を知って、食品ロスを抑えるアクション

 


サステナブルライター山下 略歴

電力会社やベンチャー企業でエネルギー関連のビジネスに従事したのち、2019年にサステナブルライターとして独立しました。「家庭の省エネエキスパート」資格を持ち、自治体において気候変動や地球温暖化に関するセミナーを実施した経験もあります。環境問題をもっともっと身近に感じてもらえるよう、わかりやすい記事を心がけています。

【実績】「RE JOURNAL(VOL.02)」「SOLAR JOURNAL(VOL.33)」「情報誌グローバルネット 2020年4月号」ほか

Facebook

----------------------------

ロスゼロは、食品加工メーカーで様々な原因によって発生する

食品ロス予備軍を直接消費者や企業につなげ

食品ロス(フードロス)の削減を目指す通販サイトです。

日本に溢れる「もったいない」を

ネット通販を通じ、より気軽に、よりポジティブに削減し、

次の笑顔へつなげる取り組みを行っています。

また、ロスゼロはSDGs12番「つくる責任・つかう責任」を

メインとして取り組んでいます。

----------------------------

 

 

投稿者プロフィール

サステナブルライター 山下
電力会社やベンチャー企業でエネルギー関連のビジネスに従事したのち、2019年にサステナブルライターとして独立しました。「家庭の省エネエキスパート」資格を持ち、自治体において気候変動や地球温暖化に関するセミナーを実施した経験もあります。環境問題をもっともっと身近に感じてもらえるよう、わかりやすい記事を心がけています。

----------【監修者:文 美月】----------

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は長風呂。