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【食品ロスの現状】国内外の統計データから学ぶ

公開日: 更新日:2023.12.22
【食品ロスの現状】国内外の統計データから学ぶ


地球温暖化の主要な原因は温室効果ガスの排出です。

食品の生産から輸送までに必要なエネルギーの使用、食品破棄による焼却処分。食品ロスが発生すると、さまざまな段階で温室効果ガスが排出されます。

食品ロスを削減することは、温室効果ガスの排出を抑制し、地球温暖化の進行を遅らせる一助となるのです。


食品ロスの現状:国内外の統計データから学ぶ

日本における食品ロス発生量:農林水産省の報告書から

日本では、年間約600万トンの食品ロスが発生しており、そのうち家庭から出るものが最も多く、約50%を占めています。農林水産省の報告によれば、1人当たりの食品ロス量は年間約65キログラムで、これは1日あたり約180グラムに相当します。食品ロスは地球温暖化にも影響を与えるため、削減が喫緊の課題となっています。  
日本の食品ロスの発生状況  

世界的な食品ロスの状況:FAOの推計データ

世界全体で見ると、食品ロスの量は年間約13億トンに上ります。これは、世界の食料生産量の約3分の1に相当する巨大な無駄です。FAO(国連食糧農業機関)によると、飢餓に苦しむ人々に十分な食料を提供できる量が、食品ロスとして捨てられていることが明らかになっています。  

食品ロスの主な原因:家庭、飲食店、小売店の分析

食品ロスの原因はさまざまで、家庭では賞味期限や消費期限の誤解、食材の管理方法の不備、調理時の過剰な量などが挙げられます。飲食店では、注文のキャンセルや食べ残しによるロスが多く発生しています。一方、小売店では、規格外の見た目や賞味期限が迫った商品が廃棄されることが主な原因です。これらの問題に対処することで、食品ロスの削減が期待できます。  
 

食品ロスが環境に与える影響:温室効果ガス排出量との関連

食品ロスによる二酸化炭素排出量:地球温暖化への影響

食品ロスは地球温暖化に大きな影響を与えています。FAOの報告によると、食品ロスに関連する二酸化炭素排出量は年間約37億トンで、これは世界全体の温室効果ガス排出量の約8%を占めています。もし食品ロスが国だと仮定すると、排出量では中国、アメリカ、欧州連合に次いで、世界第4位の排出国となります。このように、食品ロス削減が地球温暖化対策の一翼を担うことがわかります。  

食品廃棄物の焼却処理:エネルギー消費と環境負荷

食品廃棄物は、多くの場合焼却処理されますが、これにより大量のエネルギーが消費され、さらなる二酸化炭素排出につながっています。また、焼却処理にはダイオキシンなどの有害物質の発生も懸念されており、環境負荷が増大しています。食品ロスの削減は、焼却処理の環境負荷を減らすことにも貢献します。  

食料生産の資源消費:地球環境への悪影響

食品ロスは、食料生産に関連する資源の消費も無駄にしています。水資源や農地、化学肥料などの消費が、生産された食料が廃棄されることで無意味になります。さらに、食料生産は森林破壊や生態系の破壊、水質汚染などの環境問題を引き起こしています。食品ロスを削減することは、地球環境に与える悪影響を抑える上で重要な取り組みとなります。  
 

食品廃棄物のリサイクル方法:バイオガスや堆肥化への取り組み

バイオガス化:食品ロスからのエネルギー回収

食品廃棄物をバイオガス化することで、食品ロスから再生可能エネルギーを生み出すことができます。バイオガスは、食品廃棄物を嫌気性微生物によって分解させることで得られるメタンガスを利用したエネルギーです。このプロセスは、環境に優しく、化石燃料に頼らない持続可能なエネルギー源として注目されています。バイオガス化施設は世界中で増加傾向にあり、食品ロスをエネルギーに変える取り組みが拡大しています。  

堆肥化による資源循環:農業活用への取り組み

食品廃棄物を堆肥化することで、廃棄物を有益な資源に変えることができます。堆肥は、有機物を分解し、植物に栄養を与える土壌改良剤として利用されます。堆肥化により、食品ロスを資源循環に取り入れ、農業生産性を向上させることができます。また、化学肥料の使用量を減らすことで、水質汚染や生態系への悪影響も抑制できます。  

地域協力型リサイクル活動:食品ロス削減と環境保護

地域レベルでのリサイクル活動も、食品ロス削減と環境保護に貢献しています。地域住民や企業が連携してロスとなっている食品を集め、バイオガス化や堆肥化に取り組むことで、地域全体での食品ロス削減と環境保護が実現できます。こうした取り組みは、地域のエネルギー自給率の向上や循環型社会の実現につながり、持続可能な地域社会づくりに寄与しています。  
 

スーパーやレストランの食品ロス削減施策:フードバンクやデリバリーサービスの活用

フードバンク:余剰食品の社会貢献活動

フードバンクは、スーパーや飲食店から余剰食品を収集し、福祉施設や食品支援団体に無償で提供する活動です。これにより、食品ロスの削減と同時に、食品の需給格差や飢餓問題にも貢献できます。フードバンク活動は、世界各国で展開されており、例えばアメリカでは年間約120万トンの食品が回収されています。日本でも、フードバンク活動が広がりを見せ、企業や自治体と連携して効果的に食品ロス削減に取り組んでいます。  

デリバリーサービスの活用:飲食店の食品ロス対策

デリバリーサービスを活用することで、飲食店は食品ロスを削減できます。食品ロス削減アプリを用いることで、閉店間際の余剰食品を割引価格で提供することが可能になります。消費者は安価に美味しい食事を楽しむことができ、飲食店は在庫処分のコストを削減できるため、両者にメリットがあります。こうした取り組みは、食品ロスの削減に大きく貢献し、環境にも優しい選択となります。  

規格外野菜の流通促進:スーパーでの取り組み

規格外野菜は、見た目やサイズが規格に合わないために市場に出回らない野菜です。これらの野菜は、品質や栄養価に問題がないにもかかわらず、廃棄されることが多いです。しかし、最近ではスーパーが規格外野菜を取り扱う取り組みが広がっています。規格外野菜を安価で販売することで、消費者は経済的に野菜を購入できるようになり、同時に食品ロスも削減できます。これにより、持続可能な食品供給が実現される一助となっています。  
 

日常生活でできる食品ロスの削減:買い物や調理の工夫

家庭でできる食品ロス削減

 

適切な買い物計画:無駄な食材の購入を防ぐ

食品ロスを削減するためには、適切な買い物計画が重要です。計画的に買い物をすることで、家庭での食品ロスを大幅に減らすことができます。まず、食事メニューを事前に立て、必要な食材をリストアップしましょう。また、冷蔵庫や食品庫の中身を確認し、賞味期限の近い食材を優先的に使うよう心掛けます。さらに、一度に大量に買いすぎないことや、買い物に行く頻度を調整することも効果的です。  

工夫ある調理方法:食べ残しを減らすレシピ

食品ロス削減には、工夫ある調理方法が役立ちます。食材を使い切るレシピや、残り物をアレンジするアイデアを活用しましょう。例えば、野菜の皮や葉っぱなど、通常捨てられる部分を活用したレシピがあります。また、炊き込みご飯やオムレツなど、残り物を美味しく食べられる料理もたくさん存在します。こうした工夫を取り入れることで、食べ残しを減らし、食品ロスを削減できます。  

適切な食品保存:適材適所で品質維持

食品を適切に保存することで、食品ロスを減らすことができます。まず、食品の保存方法や保管場所を確認しましょう。例えば、冷蔵庫内は上段・中段・下段でそれぞれ適した保存温度が異なるため、食品ごとに最適な場所に保管することが重要です。また、保存容器やラップを使って、食材が乾燥しないように保護することも効果的です。 乾燥した場所で密閉保存することで、粉類や乾物の品質を維持できます。食品ごとに最適な保存方法を取り入れることで、食品の品質と安全性を維持し、食品ロスを削減することができます。
 

賞味期限と消費期限の違い:正しい解釈と使い分け

賞味期限と消費期限は、食品の品質と安全性を示す重要な情報ですが、その違いを正確に理解することが食品ロス削減につながります。賞味期限は、食品の味や品質が保たれる期間を示し、期限が過ぎても食品安全上の問題はありませんが、味や食感が落ちる可能性があります。一方、消費期限は食品の安全性を示す期限であり、期限を過ぎると腐敗菌などが増殖し、食中毒のリスクが高まるため、過ぎた食品は摂取を避けるべきです。  
 

食品廃棄物の削減に取り組む企業の役割

企業による食品ロス削減施策:生産・流通・販売の取り組み

企業は食品ロス削減において重要な役割を担っています。生産段階では、予測精度の向上や在庫管理の最適化により、過剰生産を抑える取り組みが進められています。流通面では、ロジスティクスの効率化や、規格外品の取り扱い拡大が行われており、販売段階では、消費者に対して割引販売や情報提供を通じた食品ロスの意識向上が求められています。  

地域やNPOとの協力:食品ロス問題の解決を目指す

食品ロス削減の取り組みは、地域やNPOとの連携も重要です。地域のフードバンクや食品ロス削減を目指すNPOと連携することで、余剰食品の有効活用や情報共有が進みます。また、学校や自治体が主導する啓発活動やワークショップを開催し、消費者の食品ロスに対する意識改善を図ることも、問題解決に向けた一歩となります。  
 

食品ロス削減に向けた国際的な取り組み:SDGsや国連イニシアティブの紹介

  SDGs 12  

SDGsの目標12.3:2030年までに食品ロスを半減

持続可能な開発目標(SDGs)の一つである目標12.3では、2030年までに小売・消費者レベルの食品ロスを半減させることを目指しています。食品ロスは、環境や経済、社会に大きな負担をかけており、削減によって気候変動や食糧安全保障の改善が期待されています。国際的な取り組みが求められる中で、各国がこの目標達成に向けた政策や施策を立案・実施しています。  

国連の食品ロス削減イニシアティブ:世界的な連携と取り組み

国連は食品ロス削減に関するイニシアティブを展開し、世界各国の取り組みを促進しています。これにより、国際的な連携や情報共有が進み、食品ロス問題の解決に向けた取り組みが加速しています。また、国連は各国に対して、食品ロス削減に関する政策や法制度の整備、技術や金融支援、消費者啓発活動などを推進することを呼びかけています。  

各国のベストプラクティス:食品ロス削減の成功事例

食品ロス削減に成功している国々の事例を紹介することで、他国への示唆や取り組みの広がりが期待されます。例えば、フランスでは食品廃棄物削減法が制定され、スーパーマーケットに対して未販売の食品の寄付を義務付けています。また、日本では、規格外品の流通促進や消費者啓発キャンペーンが行われており、食品ロス削減の取り組みが進められています。これらの事例から、効果的な政策や施策のヒントを得ることができます。  
 
【主な参考資料等】
農林水産省:aff(あふ)202年10月号
FAO統計データベース
国際連合広報センター
 
 

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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に交換留学で訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。