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世界の飢餓問題と栄養不足改善への取り組み

公開日: 更新日:2023.12.22
世界の飢餓問題と栄養不足改善への取り組み


飢餓は現在もなお、世界の多くの人々が直面する深刻な問題です。世界で約8億人が栄養不足で苦しんでおり、これは世界人口の約10%に相当します。

特にアフリカやアジア、中東などの開発途上地域で顕著であり、食糧不足と食品ロスという厳しい矛盾が解決の鍵を握っています。

2030年まで、さらに飢餓人口が増加するという予測に直面し、我々はこの問題にどう向き合うべきなのでしょうか。



飢餓の主な原因: 紛争、気候変動、貧困

左側は気候変動が起きている

紛争と飢餓の関連性

紛争は飢餓の主要な原因のひとつであり、紛争地域では食料供給が中断され、農業生産が困難になることが多くあります。さらに、紛争は人々の生活環境や安全を脅かし、食料を確保する能力を低下させます。
国連の報告によれば、紛争が続く地域では、飢餓人口が世界平均の2倍以上に上昇していることが明らかになっています。そのため、平和構築や紛争解決が飢餓問題の根本的な解決に向けた重要な取り組みとなります。

気候変動による農業への影響

気候変動は農業に大きな影響を与え、飢餓問題を悪化させる要因となっています。
気候変動により干ばつや洪水などの自然災害が頻発し、農作物の生産量が低下します。また、農業従事者の生計が脅かされ、地域全体の食料安全保障が低下することがあります。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、気候変動が進行することで、2050年までに食料生産が最大で2割減少する可能性があるとされています。

貧困と栄養不足の連鎖

貧困は飢餓のもうひとつの重要な原因です。貧困にあえぐ人々は、十分な食料や栄養素を摂取することが難しく、栄養不足や健康問題に陥りやすくなります。
栄養不足は子どもたちの発育や教育成績に悪影響を与え、その後の就労機会を減らし、さらなる貧困の連鎖を引き起こします。
世界銀行のデータによると、極度の貧困状況下で生活する人々は、栄養不足のリスクが非常に高いとされています。このため、貧困削減や経済的な支援が飢餓問題の解決に向けての重要な取り組みです。具体的には、教育や健康サービスの充実、雇用創出、社会保障制度の整備、農業技術の向上などが、貧困と栄養不足の連鎖を断ち切るために必要な施策となります。
また、持続可能な開発目標(SDGs)の目標1である「貧困をなくす」を達成することが、飢餓問題の根本的な解決に繋がります。国際社会や政府、NGO、市民団体が連携し、貧困と栄養不足の連鎖を解消するための取り組みを推進することが求められます。

飢餓と栄養不良の影響: 健康、教育、経済

男の子が黒板の前に座っている

健康に対する慢性的な栄養不足の影響

慢性的な栄養不足は、免疫システムの弱体化や成長障害、認知発達の遅れなど、さまざまな健康上の問題を引き起こすことが知られています。
例えば、世界保健機関(WHO)によると、栄養不良の子どもたちは、適切な栄養を摂取できる子どもたちに比べ、感染症にかかりやすくなり、3倍以上の死亡リスクがあるとされています。また、慢性的な栄養不足は、骨密度の低下や筋力の低下にもつながり、将来の健康に影響を及ぼすことがあります。

飢餓が子どもの教育に与える悪影響

飢餓が子どもの教育に与える悪影響も深刻です。
栄養不良の子どもは、学習能力が低下し、集中力が欠ける傾向があります。UNICEFの報告によれば、飢餓による栄養失調の子どもは、学業成績が平均よりも低く、より高い学年への進級が困難であることが明らかになっています。教育の質が低下することで、子どもたちの将来の機会が制限され、貧困のサイクルが続く恐れがあります。

経済発展と飢餓の関係

飢餓と経済発展の関係は、相互に影響し合うものです。飢餓による健康や教育の問題は、労働力の質や生産性の低下を招くため、経済発展が阻害されることがあります。
世界銀行の研究によれば、栄養不良が労働力生産性を最大で20%低下させるとされています。一方で、経済発展が進むと、所得が増え、食料へのアクセスが向上し、飢餓を減らすことができます。したがって、飢餓の問題解決は、経済発展を促進することと密接に関連しています。
経済成長が持続可能で包括的なものである場合、貧困層に対する収入の再分配や社会福祉制度の充実が進み、栄養状況が改善される可能性があります。加えて、農業技術の革新や持続可能な食料生産システムの導入が、食料供給の安定化に寄与し、飢餓を軽減することが期待されます。
国際社会が飢餓問題に対処するためには、経済発展だけでなく、教育や健康の改善、地域間格差の是正、持続可能な食料生産システムの推進など、多面的なアプローチが必要です。

飢餓の地域的な特徴と状況

空のお椀を持っている

アフリカとアジアの飢餓事情

アフリカとアジアでは、多くの国々が飢餓や栄養不良の問題に直面しています。
国連世界食糧計画(WFP)によると、世界の飢餓人口の約60%がアフリカに、約30%がアジアに分布しています。特に、サハラ以南のアフリカや南アジアでは、気候変動や紛争、貧困などが重なり合い、食料の生産や供給が困難な状況が続いています。

飢餓に苦しむ開発途上国の課題

開発途上国では、飢餓と栄養不良が社会全体に大きな影響を与えています。
FAOの報告によれば、開発途上国では経済成長に伴い食料の生産量は増加しているものの、所得格差や土地の不平等、インフラの不備などが食料へのアクセスを阻んでいます。また、気候変動や紛争の影響で、食料生産や流通が妨げられるケースも多く、持続的な食料安全保障の確立が課題となっています。

先進国の食料安全保障問題

先進国でも、食料安全保障の問題が無視できない状況です。貧困層や高齢者、移民などの社会的に弱い立場の人々が飢餓や栄養不良のリスクにさらされています。
OECDのデータによると、先進国の約1割が食料のアクセスに困難を抱えており、特に持続可能な食料供給や格差問題の解消が喫緊の課題となっています。これらの問題に対処するためには、政策や制度の改革が求められ、国際協力や民間セクターとの連携が不可欠です。

国際社会とNGOの飢餓対策への取り組み

世界の国旗

国連世界食糧計画(WFP)の活動

国連世界食糧計画(WFP)は、飢餓問題に対処するために、緊急食料支援や学校給食プログラム、農業支援などの幅広い活動を行っています。WFPは、約88カ国で年間約1億人に食料支援を提供し、そのうち約60%が紛争地域での活動です。
また、気候変動対策や災害復興支援、持続可能な食料生産技術の普及などの取り組みも行っています。これらの活動を通じて、WFPは国際社会の飢餓対策の中心的な役割を果たしています。

FAOとユニセフの協力

国際連合食糧農業機関(FAO)ユニセフは、飢餓問題の解決に向けて連携して活動しています。
FAOは、農業生産力の向上や持続可能な農業技術の開発・普及、食料政策の策定支援などを行っており、ユニセフは、栄養改善や健康・衛生状況の改善を目指す活動を展開しています。両機関は、飢餓の根本的な原因である貧困や格差の問題に取り組むため、政府や地域社会と協力してプロジェクトを実施しています。

非政府組織(NGO)の支援プログラム

非政府組織(NGO)も、飢餓問題への取り組みで重要な役割を担っています
。世界各地のNGOは、地域のニーズに応じた食料支援や農業支援、教育・健康支援プログラムを展開しています。また、地域社会の自立を促すために、持続可能な農業技術の普及や地域経済の活性化を目指すプロジェクトも行っています。
NGOは、国際機関や政府と連携しながら、飢餓問題の解決に向けて効果的な支援を提供しているのです。

持続可能な食料生産とサプライチェーンの役割

農業で手を取り合っている

持続可能な農業技術の普及

持続可能な農業技術は、食料生産の効率化や環境への負荷軽減に寄与し、飢餓問題の解決につながります。これには、節水型灌漑技術や精密農業、有機農業、改良品種の導入などが含まれます。
FAOによると、持続可能な農業技術の普及により、食料生産は2050年までに60%増加する可能性があります。また、持続可能な農業技術の普及は、気候変動への適応や減災、生物多様性の保全にも貢献するため、総合的な取り組みが求められます。

食料供給チェーンの効率化

食料供給チェーンの効率化は、食料ロスや廃棄の削減、食料のアクセス向上に繋がります。
世界銀行の報告によれば、食料ロスと廃棄は世界の食料生産量の約25%に相当し、これを削減することで飢餓問題の緩和が期待されます。食料供給チェーンの効率化には、インフラ整備、デジタル技術の活用、公正な取引慣行の確立などが重要です。

小規模農家の支援

小規模農家は、世界の食料生産の約70%を担っており、彼らへの支援は飢餓問題の解決に不可欠です。政府や国際機関、NGOは、資金や技術支援、市場アクセスの改善など、小規模農家に対する支援を行っています。
また、女性農家や若者農家に対する次世代への技術継承が、飢餓問題の解決に繋がるとされています。小規模農家への支援は、地域の持続可能な発展や食料安全保障の向上に貢献します。

個人ができる飢餓対策: 寄付、ボランティア活動、意識向上

協力して食べ物を分けている

寄付による飢餓緩和の効果

寄付は、飢餓問題の緩和に大きな効果を発揮します。
世界食糧計画やユニセフなどの国際機関は、寄付を活用して、飢餓に苦しむ地域への食糧支援や栄養改善プログラムを実施しています。例えば、世界食糧計画は、2020年に約1億人に食糧支援を提供し、多くの命を救っています。個人が寄付を通じて飢餓問題の解決に貢献できることは、社会全体への意識向上にも繋がります。

ボランティア活動での飢餓対策参加方法

ボランティア活動は、飢餓対策への個人参加を促す手段です。
国内外のNGOやNPOでは、食品配布、農業支援、栄養教育など、様々な形で飢餓対策を行っており、ボランティアとして参加することができます。また、現地での活動だけでなく、オンラインを活用した飢餓問題への取り組みや啓発活動にも参加することが可能です。

飢餓問題に対する意識向上の重要性

飢餓問題への意識向上は、社会全体の取り組みを促す上で不可欠です。SNSやブログ、イベントなどを通じて、飢餓問題の現状や解決策を広めることで、より多くの人が関心を持ち、寄付やボランティア活動への参加が増えます。
また、消費者として持続可能な食料消費や食品ロス削減に取り組むことも、飢餓問題の解決に繋がります。飢餓問題への意識向上は、国際社会が一体となって取り組むべき課題であり、個人一人ひとりの行動が大きな力となります。


※参考文献
ユニセフ:世界の食料安全保障と栄養の現状2022

国連広報センター:飢餓をゼロに

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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に交換留学で訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。